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「エルフェンリート」(Elfen Lied)

ごく最近に「エルフェンリート」(Elfen Lied)というアニメを見た。
今まで知らなかった。
 
他の件でネット検索していたら、たまたま出会ったのである。
知る人ぞ知る有名な作品で、原作もアニメもヒットしたらしい。
既に数年前に話題になった作品だ。
原作の話題性で言えば、5年ほども遡ることになる。
 
俺はアニメ版でハマった。(実は原作漫画は、まだ拝読していない。すみません。)
ともあれ、オープニング・アニメのグスタフ・クリムトを模した絵と、その演出の秀逸なセンスに吃驚。
それになんと言っても決定的なのは『LILIUM』という主題曲の哀しいまでの荘厳さにノックアウトされたことだ。
 
第1話の冒頭10分あまりの演出は凄い。
 
色々なハリウッド映画作品のとある場面を、そこかしこに想起させる感覚に陥るが、これはジャパニメーションでなければ描けない絶対領域の世界観だろう。
ある意味、実写の劇映画さえ超えている。
 
実はこのアニメ版の作品は、以前から俺のウエブ日記やブログで紹介させていただいているアニメ・マニアな友人に、2年ほど前にディスクを借りていたのだが、それは地上波を録画したもので、なんとなく一部を垣間見たものの、さほど歓心が湧かずに、ちゃんと見切らずに見逃してしまっていた。なぜなら地上波放送のこのアニメは残酷な描写の自主規制から「わけのわからない画面のつるべ打ち」になってしまっていたからだ。
残虐シーンがカットしまくりでは、体を成さないのである。(にしても、なんでオープニング・アニメまでその時に琴線に触れなかったは謎である。多分、当時は早送りしてしまって、音楽をしっかりと聴いていなかったんだろうなぁ・・・。)
 
これを「AT-X」放送版の(ほぼ)規制のない画面で見ると、アニメや原作の持つテーマ性のショッキングさが浮き彫りになる作品だった。
そこをかいくぐらないと、この作品に関しては真価を問えなくなるのである。

「エルフェンリート」OPアニメ・シーン
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グスタフ・クリムトの絵画を模した絵。
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グスタフ・クリムトは20世紀初頭に活躍した画家である。
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なんともお洒落だ。どんなアニメが始まるのかと思ってしまう。
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素晴らしいのは声楽曲『LILIUM』の美しさ、もの悲しさ。
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この1枚などは完璧にグスタフ・クリムトの『接吻』である。
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耽美的でさえある。
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もう一度グスタフ・クリムトの『接吻』。
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とにかく美しい。赤毛のヒロインの側頭部にある猫ミミみたいなものは「角(つの)」である。
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ここからアニメ本編の紹介。(画面は4:3となる。OPアニメ・シーンのみ上下に黒帯があった。)
DVDでは全編16:9になっているのだろう。それが見たくて遅まきながらDVD版を全巻発注した。それが届く前にAT-X版の画面で紹介していく。
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画面は全て地上波放送版ではなくAT-X版(スカパーのアニメ専用チャンネル)である。
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冒頭「羊たちの沈黙」のレクター教授の拘束具のようなスタイルで拘束されていたヒロインが収容所を脱走するシーン。(脱走と言っても、彼女はひたすらゆっくりとした歩調で前進するだけだ。)
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なんの説明もなく凄惨な殺戮シーンが続く。
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全身拘束具で固められていたが、檻を脱出した時点でヒロインの拘束の名残は鉄仮面だけとなっている。(四肢を拘束していた囚人服?を脱いだヒロインは全裸である。)
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銃撃シーンのエフェクトなども音響とあいまって効果有り。
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地上波では、こういう残虐シーンは、全てエフェクトがかけられるか、完全に真っ黒な画面で音声のみとなっているので「わけのわかんないシーン」が延々と続くことになる。
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スカパーではその辺が(ほぼ)ノーカット放送された。(DVD版の方は、もっとモロ見せらしい。)
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獲物を相手に子供のようにしゃがみ込むヒロイン。
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恐ろしい。(このあと、鉄仮面のヒロインに画面は固定されたまま音声のみで、肉や骨のきしむ音と引きちぎれる様子、躊躇無く警備員を殺害している描写がされている。)
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ヒロインの絶対的殺傷武器はベクターと呼ばれる「目に見えない4本の手」である。その見えない触手の威力が及ぶ範囲に接近すると攻撃される。つまり、距離を置けば大丈夫な理屈なのだが、9ミリパラペラム程度の拳銃弾くらいはベクターが排除してしまって(飛び道具も)通用しない。
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あろうことか、このシーンに、事態の深刻さを知らないお茶くみをしていた女性職員が、つんのめってまろび出る。
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彼女はこの直前に同僚と給湯室で談笑する無邪気なシーンが挿入されていた。(そういう演出のせいもあり、アニメ全編を見終わっても尚、この如月という女性職員の悲劇が、俺には一番ショッキングだった。)・・・血糊のついたベクターの手が彼女の肩に触れる。
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直後のシーンでなんのためらいもなく女性職員の首は(見えない手によってあっさりと)ねじ切られる。さすがにこのシーンはAT-X版においてさえ、下部に光のエフェクトが入ってボカされる。推察するに話数の先のシーンで男性警備員の首が回転しながらゆっくりとねじ切られるシーンがあったので、ここも同様の動画になっていたのだろう。
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女性の首がゆっくりと中空に浮かぶ。
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出血の様子も生々しい。
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自分の身に何が起こったのかわからないままの女性職員の表情。
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ゆっくりと崩れ落ちる女性の首のない体。
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いったん床に横たわった女性の死体を次には銃弾よけに差し上げる冷徹な鉄仮面のヒロイン。床に転がっている女の子の首が非道い。
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さすがに、これだけの数のSMGによる一斉射撃は盾を使って防いでいるが。
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基本は223アーモリーくらいでもベクターで排除出来るふしがある。防御の省エネのようだ。(もっとも、画面で警備員の装備兵器を見る限り小型のリボルバーやSMGにMP5くらいしか出ていないので、全て拳銃弾という事になる。ベクター1本で盾を持ち、あとの3本のベクターによる高速移動やその振動波によってシールドを張っている理屈だろう。)
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ひとしきりの弾倉分が底を尽くと、またゆっくりと前進開始。
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警備員が肉弾突撃しても相手にならない。このシーン、実は胸を突き破られて警備員の心臓が背後の警備員の胸元まで飛んでいる。
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警備員、なす術無し。だったら全員逃げればいいのに。あまりのことにあっけにとられている。(警備員たちは相手がどんな化け物か詳しい知識がないまま戦わされている様子だ。)
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逃げる間も無く4人ほどが次々と犠牲に。
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室長のメガネの男性の背中にベクターでタッチ。『おまえは、まだ今は殺さない』というヒロインの無言のメッセージ。
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ついに施設の屋外までゆっくりと逃走したヒロインの後頭部を狙うターゲット・レティクル。
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スコープ照準の正体は対戦車ライフル。ターゲットの首を跳ね飛ばす算段らしい。ヒロインのベクターでも防御不可という判断。
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しかしトリガーを引いた瞬間、気配に感づいたヒロインが振り返ろうとして横を見た。
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その側頭部にヒット。
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鉄仮面を粉砕したが、これがクッションになってターゲットを仕留めきれていない。・・・ヒロインは夜の断崖から、海へと落下する。
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彼女が次に姿を現したのは(多分、翌日の)昼間の海岸だった。(舞台は鎌倉の由比ヶ浜あたり。)
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偶然に海岸に来ていた男女がヒロインを目撃。
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赤毛のヒロインは茫としてそこに立ちつくしている。
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何も覚えていない。
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自分が誰なのかも分からない。
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「はっ」と気づく彼女の目は前夜の殺戮者の表情ではない。側頭部の一対の角は「硬い猫ミミ」にしか見えませんが(笑)。
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記憶を失った彼女は人のいない方向に逃げ出そうとして砂浜で転ける。
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今はただのあどけない少女である。
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それどころか、じつは言語さえ失っている。(発声はするが、これ以降「にゅーにゅーとしか言わない。」)
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幼児のように泣き出す。
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海岸で出会ったのが運のつきで、カップルでいた男女が、とりあえず家に連れて帰る。
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冒頭の殺戮者の面影が微塵もない彼女、(精神分裂を起こし、別人格になってしまっている。表情や顔つきまで別人である。)
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桜の花びらが不思議な彼女。別人格になる前の彼女「にゅう(本体はルーシーと呼称される)」は8年間も鉄の扉と厳重な拘束具によって、身動きのとれないまま幽閉されていたのだ。

とにかく、第1話に関しては圧巻である。
 
とりわけ、『LILIUM』というテーマ曲の劇中における使われ方が凄い。
音楽が、作品のステージを2~3ランクくらいは押し上げている。(というよりは、『LILIUM』というテーマ曲がなければ、このアニメ作品は成立しないとさえ俺は思う。このアニメ全編にわたって全く別のテーマ曲を与えられていたら、それは別物の作品になっていただろう。)  
 
このアニメの原作は2002年~2005年に描かれ、アニメは2004年の製作公開だったらしい。(原作の完結前にアニメは製作され、原作とは違うシナリオになっているようだ。)
 
今の俺には描き手の立場として、あまりバイオレンス嗜好や残虐な描写に腐心するようなベクトルは薄れたが(求められれば描かなくもないが、自分から積極的に発信する勢いは薄れた。・・・だって、こういう作品って制作サイドは病みます。原作者、よくぞ漫画コミックス12巻分をラストまで描ききったと思う。この手の陰鬱なテーマの作品は、描き手も侵すきらいがある。短期間ならともかく、何年もの長期間の付き合いとなると、描けば描くほど描き手も陰鬱に摩耗していくのだ。経験済みである。描けば描くほどリフレッシュ出来るテーマを選ぶ方がよろしい。・・・それが分かっていて、何故、こういうスプラッター漫画やバイオレンスを描きたい欲求が俺や他の作家にあるのかというと、その理由ははっきりと把握している。テーマに関する事を作品ではなく言葉で記してしまう気はないので、ここでは明記しないが・・・。いずれにせよ難しいテーマではある。拒絶される人には完全に拒否反応を受けてしまうジャンルのものだし。そうしたハードルがあって尚、「エルフェンリート」は評価されていい作品だと思う。事実、評価されているらしい。が、当然、万人に推奨は出来ない。)
 
それでも、このエルフェンリートの場合は、アニメと漫画とに決定的な違いがある。
アニメには「音」があるのだ。
「音楽」。「声」。
書物と映画(当然、無声映画は枠外)の差である。
 
アニメ版「エルフェンリート」は、まるで宗教音楽のような、声楽曲の救いがあって、何かしら原作のテーマ性の行間を埋めて、さらに昇華させるような力を感じる。 
 
俺が10年~15年ほど前に描きたかったものはこういう作品だったのかもしれない。(「聖狼少女」まで遡ると20年前になる・・・。)
アニメ版と原作は微妙に違うようだが、俺が暫くの間、バイオレンスなジャンルの漫画を描くことに思い入れていた時代の1988年~1994年頃から、7~8年後にこういう作品が、格段に才能豊かな作家(岡本倫先生)の手によって世に出ていた事をちっとも知らなかった。
俺も、のどかである。
 
アニメの完成度に関しては、後半に行くほどいくつか思うところもあるが、(原作に関しては読ませていただいていないだけに、何も語ってはいけないが)・・・おおいにアニメ版に感心はした。
 
とにもかくにも、音楽『LILIUM』は至宝である。
 
Lilium
       
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インターネット広告の「トランスメディア」提供スキンアイコン by PINKNUT_INC | 2007-12-31 00:52 | Comments(6)