デッサン(昔の絵)
2008年 05月 25日
少女漫画デビューした私が、当然のようにほどなく(女流作家のフリをして描き続けることに)限界を感じて、少年誌に転向しようとしていた時のデッサンだ。
少女誌では、他の女流作家と同様に、バストのない寸胴(ずんどう)な体格でいて、さりとて決して性的に豊かにはならない、棒のような細い手足と鶏ガラのようにスレンダーなスタイルの女の子ばかり描いていた。
肉感的な女の子を描きたくなった。
少女誌の時とは、かなり違う絵柄を手に入れようと模索していた。
1000枚単位のデッサンを繰り返した。(これはウソ。基幹的には転向に1年間かかったが、200~300枚ほど描いているうちにすぐに絵柄は変貌していった。こう変わりたいというヴィジョンがあったからスムーズだった)
少女漫画をドロップアウトしたあとの1年間はデザイン会社に勤めてサラリーを貰っていた。
ひょっとしたら、そのままサラリーマンを続けていたかもしれない。
少女漫画時代に担当してくれていた別の出版社の、ある編集者さんが少年誌に転属になった。
その編集者さんが電話連絡で私に声をかけてくれたのが1年後だったわけだ。
「最近、あの出版社の少女雑誌で見かけないけど、どうしてるの?」
少年誌に描くだけの準備は出来ていた。
その1本の電話は、渡りに船だった。
デザイン会社は多忙な職場で休めるヒマがなかった。いつも終電で帰宅していた。(非道いときは泊まり込みもあった。)
また漫画を描くことは、通勤の往復する電車の中で、無理矢理にでも座る場所を見つけて「絵コンテ(ネーム)」を描くことだった。
声をかけられてから2ヶ月後に少年誌デビューをした。
その頃には、もう下の絵柄になっていた。(どう少女誌時代と変わったか、比較出来る少女漫画時代の絵を、ほとんど私が出さないので分からないだろうが、相当に変わっている)
20数年以上前の自分の絵を下手!と言ってしまえばそれまでだが、私はこの当時の絵柄の中の1本のライン、1本の描線に、自分でも驚くほどのみずみずしさを今感じてしまう。
鉛筆画にはそんな雰囲気を保つ何かがある。
1枚目の「ヨットと水着の女の子」の絵なんて、今でも「悪くないな」と思う。
これをペン入れして仕上げるとなると、昔は筆圧が強くて、粗くなりがちだった。
鉛筆画の雰囲気を若い私は、ペン入れで台無しにしてしまうことも多かった。
自分で言っては申し訳ないが、今の方が繊細なペン入れは出来る。
それでも、こういう絵を描く新人がいたら、私は若い頃の自分をアシスタントに呼びたい。
教えてやりたい事と、若い頃の自分から吸収し直したい事がある。
過去は振り返らない主義が建前であっても、過去は意外と大きく自分の中の"裾野の力"として拡がっているものである。
by PINKNUT_INC | 2008-05-25 21:25 | 漫画